「何から始めればいいの?」というご相談から
「そろそろ相続のことを考えた方がいいと思っているのですが、何から始めればよいのでしょうか。」
日頃、お客様とお話しする中で、このようなお声をいただくことがあります。
「ある程度の財産はあると思うけれど、何がどれくらいあるのか整理できていない」「相続税はどのくらいかかるのだろう」。
このような漠然とした不安を抱えながらも、何から始めればよいか分からないという方は少なくありません。
そのようなとき、私たちはまず「財産の見える化(たな卸し)」から始めます。預貯金や不動産、有価証券、自社株などを整理し、
資産の全体像を把握することで、将来の相続税額や納税資金、資産承継における課題が見えてきます。
相続前対策は、生前贈与や遺言書の作成から始まるのではありません。まず現状を正しく知り、その上でこれからの承継を考えることが、
最も大切な第一歩だと考えています。
「最適な対策」は、ご家族の想いを伺うこと
財産の状況が整理できても、それだけで最適な対策が決まるわけではありません。
「会社を誰に引き継ぎたいのか」「財産をどのような形で次の世代へつないでいきたいのか」「ご家族へどのような想いを残したいのか」。
こうしたお気持ちを丁寧に伺うことで、お客様にとって本当にふさわしい相続前対策が見えてきます。
税理士として、相続税の軽減や円滑な資産承継をご提案することは重要な役割です。しかし、それだけでは十分ではありません。
税務上の効果を踏まえながらも、ご家族それぞれの想いに寄り添い、その想いを実現する方法を一緒に考えていくことを、私たちは何より大切にしています。
相続前対策が、ご家族で未来を話し合うきっかけに
以前、会社を経営されているご夫婦から、資産承継についてご相談をいただきました。
財産のたな卸しを行ったところ、自社株の割合が大きいことが分かり、株式の生前贈与や、お孫様への教育資金贈与などを組み合わせた対策をご提案しました。
その結果、将来の相続税負担を軽減できる見込みとなり、税務面でも効果をご実感いただくことができました。
しかし、私の心に残っているのは、その税務上の効果だけではありません。
対策を進める中で、ご家族がこれからの会社や財産についてゆっくりと話し合う時間が生まれました。ご両親が会社に込めてきた想いや、
次の世代へどのように引き継いでほしいと考えているのかを、お子様が直接聞く貴重な機会となったのです。
ご相談後には、税務面での効果についてのお喜びの声とともに、「私たちの想いに寄り添いながら、一緒に考えてくださって安心しました」
というお言葉もいただきました。
その言葉を伺ったとき、相続前対策とは、財産や税金のことだけではなく、ご家族それぞれの想いを共有し、未来へつないでいく時間でもあるのだと、
改めて実感しました。
遺言書は「財産」だけでなく「想い」を残すもの
遺言書の作成をお手伝いする際にも、同じことを感じます。
遺言書は、財産を誰に承継するかを定める大切な書面です。その中で、ご自身の想いを、ご自身の言葉で残される方もいらっしゃいます。
ご家族への感謝、人生をともに歩んできた配偶者への想い、子や孫の幸せを願う気持ち。
その一つひとつの言葉から、その方が歩んでこられた人生や、ご家族への深い愛情が伝わってきます。
その想いに触れるたび、胸に込み上げるものを感じます。そのたびに、遺言書は財産を承継するためだけの書面ではなく、ご家族へ想いを届ける
「最後の手紙」のような役割も果たしているのではないかと感じています。
「何を残すか」だけでなく、「何を伝えたいか」
相続前対策は、相続税を軽減し、大切な財産を円滑に承継するための重要な取り組みです。しかし、それだけではありません。
相続前対策は、ご家族でこれからのことを話し合い、それぞれの想いを確認し合う時間でもあります。
だからこそ私たちは、「何を残すか」という財産の視点と、「何を伝えたいか」という想いの視点、そのどちらも大切にしながら、
お客様お一人おひとりに合った相続前対策をご提案しています。
大切な財産と、その先にあるご家族への想いを、次の世代へつないでいくために。