■はじめに

4月、新年度を迎えました。
街では、新しいスーツに身を包んだ新入社員らしき方を見かけることも多く、どこか初々しさを感じる季節です。
最近は、在宅勤務や副業を認める企業も増え、働き方も少しずつ多様になってきました。一人が複数の会社と関わりながら働くケースも、珍しいことではなくなりました。
こうした働き方になると、給与に関係する制度の取り扱いが少し分かりにくくなることもあります。
給与明細を見てみると、様々な控除項目が並んでいますが、その内容まで意識する機会はあまり多くないのではないでしょうか。
そこで今回は、給与に関係する代表的な制度である「源泉所得税」と「社会保険」に着目してみたいと思います。まずは、それぞれの仕組みから見ていきましょう。

■源泉所得税

給与が支払われる際には、あらかじめ所得税が差し引かれます。
これが源泉所得税です。会社が給与から税金を天引きし、本人に代わって国に納める仕組みになっています。
この給与の源泉所得税には、計算に用いる区分として【甲欄・乙欄・丙欄】の3つがあります。
・甲欄は、会社に「扶養控除等申告書」を提出している場合に適用されるもので、一般的にはその人の主たる勤務先の給与に用いられます。
・乙欄は扶養控除等申告書を提出していない場合に適用され、主たる勤務先以外の給与(副業など)で使われることが多い区分です。
・丙欄は主に日雇い労働者などの給与に適用されるものです。
実務上圧倒的に多いのは、甲欄と乙欄です。

 

■社会保険

社会保険とは、主に健康保険と厚生年金を指し、会社で働く方の医療や老後の年金などを支える制度です。
会社で働く場合、一定の条件を満たすと会社を通じて社会保険に加入することになります。
給与明細でも、健康保険料や厚生年金保険料として社会保険に係る保険料が天引きされているのを見かける方も多いのではないでしょうか。
なお、社会保険への加入の要否は、主に労働時間や雇用関係などを基準に判断されます。

 

■社会保険に加入していれば、源泉所得税は甲欄?

先ほど触れたように、源泉所得税の甲欄は、原則として主たる勤務先の給与で用いられます。
では、ある会社で正社員として働き、社会保険に加入している場合、源泉所得税は必ず甲欄になるのでしょうか。
答えはNOです。
源泉所得税の甲欄・乙欄は、あくまで「主たる勤務先かどうか」や「扶養控除等申告書の提出の有無」によって判断されるものであり、社会保険への加入とは別の基準で決まります。
そのため、社会保険に加入していても、源泉所得税が乙欄になるケースもあり得ます。
例えば、会社を経営している方が、別の会社で従業員として働いているようなケースです。
この場合、それぞれの会社で一定の条件を満たせば社会保険に加入することになりますが、税務上の主たる勤務先が別にある場合には、源泉所得税は乙欄で計算されることもあります。
また、それぞれの会社で社会保険の加入要件を満たす場合は、二以上の事業所で働く場合の取り扱いも設けられています。

 

■おわりに

いかがでしょうか。
私たち税理士法人でも、月次監査や年末調整の場面で顧問先様の給与を確認する機会があり、その際は帳簿上の処理と実際の勤務形態との間にずれが生じていないかを確認しています。
こうしたずれがあると、税務や社会保険の取扱いに影響が生じる可能性があるためです。
そのため、企業の給与担当者の方や社会保険労務士などの専門家と連携して対応することの大切さを感じています。
働き方が多様化する中で、こうした制度を整理して理解しておくことは、実務においてもますます重要になっているのかもしれません。